Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編



『率直な気持ちを述べるならば、国民の皆さんを欺いたことに関しては非常に申し訳なく思っております』


こればかりはどんな言い逃れもしたくない。私が欺いたことは紛れもない事実だから、すべてを明かした上で民の審判を仰ぐつもりだった。


『もしも私の為したことが王族として不適切だと皆様がお怒りであるならば、それ相応の責任を取る覚悟はございます』


そして、テーブルに置いていた資料のファイルを手に取る。


『私がそのような行動を取った理由はもちろんございます。皆様のお手元にある資料をご覧になってください』


アレックスが用意した資料だが、それは1日かそこらで準備できたとは思えないほどの詳細で確実なものだった。おそらく、かなり以前から調査をしていたのだろう。彼らの所属する組織がタヌキに目を付けていた証拠に他ならない。


紙を捲る音がパラパラと捲り、控えめながら、どよめきが起きた。


やはり、最初に持ってきたそれは誰にとっても衝撃的な内容だった。


一人の記者が挙手をし、職員が許可を与えて記者が立ち上がり質問に入った。


『この資料は真実なのでしょうか?』

『憶測や想像だけで申し上げるつもりはございません』

『……だとすれば、これはとんでもない事実ではありませんか? 本来ならば先に誕生していたはずのご兄弟が逝去されたのですから』

『……そうですね』


正直な話、この件を出すのは相当躊躇った。母上の辛い体験を掘り起こすことに繋がるからだ。


けれども、母上は自ら公表なさいと後押ししてくれた。


“シュトラウス公爵による流産事件”を。




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