Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
桐花はお茶を用意しようとしていたけど、乳母が断った。毒見役がいない以上は、見知らぬ場所で何かを頂く訳にはいかなかったのだ。
それよりも先に桃花に会いたいと私が希望を出せば、乳母により伝えられ慌てた桐花に案内された。
3つほどの部屋のうちの一番大きな部屋が、桃花に割り当てられていた。乳母から聞いた話では、5つ離れた妹が同じ部屋で寝ているらしい。
それにしても……と思う。
桃花の母親の趣味なのだろうか。玄関もリビングもそうだったが、ベージュの壁紙に金色の象眼細工。色とりどりの花が飾られ、家具は基本的に猫脚の白色。あちこちに花を模したセードのランプ。リビングや廊下の照明は小ぶりなシャンデリア。
……こんな女の子向けの絵本みたいな家は初めて見た、とその時はそう感じただけだったけれど。
後から考えてみれば、女の子そのものの趣味だった。
桃花の母親の桐花は、大人になりきれない少女だったのかもしれない。それだから浮気性の男は満足出来なくて、目がよそへと向いたのだろうか。
けれど、いくら妻が理想通りでなかったとしても。いや、理想的であったとしても。永遠の誓いを立てたならそれを守るべきではなかったか。
それだから……10年後の悲劇に繋がってしまうのだ。
警察のパイプを使い桃花には事故と思わせたが、実際には無理心中に近かった2人の死が。