Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編



『事件……とは? 何の根拠でそうおっしゃいますか?』

『次の資料をご覧ください。警察庁科学捜査研究所及び鑑識科が分析と検分した内容です』


ページを捲れば警察庁の科学捜査研究所の詳細な資料となる。様々な専門用語が入りわかりづらいが、研究所所長と警察庁長官のサインが入った正当なものだ。


やはり、宮内庁を担当する記者に科学的な資料はちんぷんかんぷんのようだ。無理もない。事件を扱いなれた記者ならともかく、王族関連では警察が関わることなどまずないのだから。


『この資料から読み取れることは、欄干が壊れたのは経年劣化からではないとのことですが。それでは何が原因なのでしょうか?』

『その前に、これを頭に入れてください』


私は記者の質問を一度遮り、どうしても必要な情報を提供した。


『転落のあったほぼ10年前――私が日本へ留学する前のサマーバケーション。私は国内のあちこちを訪問してました。それこそ、普段は人があまり訪れないような場所までも。
そしてその時……この地方にも訪問予定であり、完成した橋へと足を向けることはほぼ決まっておりました』

『……10年前ですか』

『はい。予定では完成式典で私は橋の欄干から、川へと花を捧げるはずでした。そしてそこは、ちょうど転落があった部分だったのです』


さあ、必要なことは知らせた。後は勝手にマスコミが騒ぎ立てるだろう。そう思いながら、絶句する記者を見据えた。


< 240 / 391 >

この作品をシェア

pagetop