Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編



バーク卿と会食した際に手渡した資料の時には粗方の結果は出ていたが、それから非破壊検査等でより詳しく調べて判明した事実もある。


壊れた橋の欄干を構成する金属製の部品は、10年の経年劣化による腐食や傷等で壊れたのではない。


新品の時点――つまり。建造された当初から、不自然なまでに脆く造られていた。


事故が起きたその“部分”だけが、だ。


他の欄干は通常の基準を満たした強度を保っていたが、ちょうど一ヶ所だけが張りぼてのような欄干を造られた。完成記念式典で、私が立つ部分のみが。


下の川は水深が深く流れが急で、落ちたら大人でもあっという間に流される。転落した人は警察関係者だったから、とっさの対処ができたのだろう。しかし、子どもが落ちてしまえばまず助からなかった。


あまり人が訪れない地方の出来事であるから、注目度は低すぎたのかもしれないが。下手をすると世継ぎの王子が亡くなったかもしれないのだ。


そこまで理解したらしい記者たちは、難しい顔をしてパラパラと資料を捲っている。疑わしい人物を探そうと躍起になっているが、私はあえて会社名や名前等のわかりやすい情報は入れてない。その気になれば、調べたらいいのだ。きっとその最中にぼろぼろと新事実が発覚するだろう。タヌキの悪事や犯罪に繋がる情報が。


すべてを与えてしまえば、つまらない。限定的かつ断片的な情報は人の好奇心を刺激する。


おそらく、記者たちは帰ってから与えたヒントをもとに躍起になって調べるだろう。それからが第2ラウンドの始まりだ。


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