Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
『無論、ございます。もしもですが』
アレックスはインカムのスイッチを入れたまま、私へ目を向けて試すように言った。
『カイ殿下がお望みになられるのでしたら、他の局で対抗する特番を編成することも可能ですし、タヌキの思惑を潰す映像のすり替えもできます』
アレックスからの提案はひどく魅惑的で、心が激しく揺さぶられる。
おそらく、彼の提案がベストだ。ついさっき終えた会見は盛んに報道されるはず。ならば、あの番組は否応なしに注目されることになり、かなりの国民が視聴するだろう。
『カイ殿下、不躾ながらわたくしより申しあげます。お迷いになる必要はございません』
それまで黙っていたアルベルトが、珍しく私に身体を乗り出さんばかりに近づいてきた。
『あなたは正々堂々に拘りますが、相手は手段を選ばずに様々な人間を不幸にしてきた相手です。清廉潔白な方法だけに留めていては、ますます排除が遅れてしまいます』
彼の強い語調から、タヌキ……シュトラウス公爵への深い苛立ちと怒りを感じた。
無理もない。
アルベルトは兄の一人がタヌキの卑怯な策略で、生死の境をさ迷うほどの重傷を負ったのだ。あの時の静かな怒りをずっと保ち続けてきたゆえに、相当根深い。
だが、だからこそその執念が確固たる信念にも繋がっている。兄のような不幸に陥る人間を増やしたくない、という強い想いがアルベルトを後押ししているのだ。