Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
アルベルトに指摘された通りに、私は桃花に顔向け出来るようにと清廉潔白であろうとした。
正々堂々と、卑怯でない正規の手段で以て相手を排除することに拘りがあった。
だが、と私は一度目を瞑る。
日本の村田家を潰した時、私はどうだった?
まだ小学生なのにひとつの有力な家を潰すのは、子ども一人の力では不可能だった。王子である立場と、葛城等の繋がりがあって初めて実現したことではなかったか。
(私は既に卑怯者と呼ばれる人間だな)
桃花の人生を狂わせたあの女も、家が潰れた時点ではまだ学生だった。大人になりあれほど人格を歪ませたのも、もしかしたら私のしたことの結果なのだとしたら。
(……もう、目を逸らし逃げてばかりはいられない)
結局、桃花に卑怯と言われたくないための我が身可愛さの保身から、そういった手段を取ることを躊躇っていただけだ。
なんとも身勝手で幼い理由だ。あのタヌキを始めとする腐った貴族を追放するために、手段など選んでいられないというのに。
躊躇い時間がかかれば掛かるだけやつらが増長し、更に不幸になる人間が増えてますます国の内部が腐っていくだけ。
なにを、ためらう必要がある?
腐った蜜柑は取り除かねば、他の果実まで腐ってしまう。
瞼を開いた私は、アレックスに向けて指示を出した。
『アレックス、差し替えを頼む。内容はシュトラウス公爵や貴族どものスキャンダル全てだ。やつらに引導を渡してやろう』