Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
最悪、国全体を揺るがす事態になりかねない。私の決断はそれほど重く、影響力のあるものだ。生半可な気持ちでは覚悟などできやしない。
自然、鼓動が速まり額に汗がにじむ。忙しなく動く指先を宥めながら、言葉を継いだ。
『これから何が起ころうと、私の決断の結果だ。すべてを受け止める覚悟はあり、責任はきちんと取る』
『ご英断でございます、カイ殿下。我がマスターもあなた様のご決断を評価されますでしょう』
意味深な発言をしたアレックスは、改めて恭しく頭を下げ左胸に右手を当てた。
『マスター……あなたの組織の上司か?』
『はい、とだけ申し上げておきます。詳しくは申しあげられません。ですが、マスターの後ろ楯無くして動けぬ案件もございます。テレビ局への介入も、マスコミの操作のバックアップも、マスターの存在なくしては叶いません。その点はご承知おきください』
『それほど影響力がある人が……なぜ、私のバックアップを?』
アレックスが仄めかしたマスターという存在は、おそらく私では直接会えないだろう。相当影響力を持つ人物だが、なぜ彼(彼女?)は、小国の王子に過ぎない私を支援してくれるのだろうか?
だが、きっと今アレックスやエリィに訊いたところで、彼に関しては欠片も教えてはもらえないだろう。
今はそれよりも、今晩のテレビ番組に関しての対応が急務だ。アレックスに差し替えを頼んだからには、彼らは確実に任務を果たしてくれるだろう。
(あと7時間後……そこからが勝負だ)
念のため、祖父や母上の警備を厚くしておかねば。記者会見の件も含めいろいろと対策に追われているうちに、あっという間に夕方になった。