Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
『カイ、ずいぶん緊張しておるな』
『……仕方ありませんよ。これでもいろいろときてますから』
そんな会話がかわされたのは、国王陛下――つまり、祖父と私との間で。
居城であるベルンハルト城のうち、国王のプライベートである空間は奥にある一区画。今、私はそこの一室。国王陛下のプライベートルームのソファに腰掛けていた。
歴代の国王陛下が赤を好む方が多かっただけに、深紅や緋色等の壁紙やカーペットが敷き詰められている。豪奢な調度品もシャンデリアも、広く解放感がある中庭に面した窓も。今の私の目には入ってこない。
『カイ、落ち着いて。大丈夫、あなたがなさったことはきっと皆に理解されるわ』
母上までもが隣のソファでそうおっしゃり微笑む。なぜこのような事態になったかと言えば、そもそもはアルベルトの伯父であるフランクスからの提案だった。
“国王陛下が会見を観ていたく面白がられてな。今晩の反撃を一緒に見て楽しみたいんだと”
……なんて軽い理由だ。完璧におもちゃにされている自覚はあるが、その提案は願ってもない話だ。
私が為そうとしていることは、国王陛下にも少なからず影響がある。国政を担う貴族を追い落とすのだ。政務にどれだけの支障が出るかは読みきれない。
私がすることを知っていただきたかったし、覚悟を認めて欲しかった。