Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
前半は、予告通りに私の日常を淡々と冷静な視点で語っていく。時折入るナレーションも、あくまで第三者の公平なものだった。
予想外のハプニングで私が滑って転んだところまで……
『カイ殿下は意外とおっちょこちょいのようです』
なんて解説、いらないだろう。
これは絶対エリィの差し金だと頭を抱えるのを堪えていれば、祖父が呵々大笑なさった。
『わははは! カイ、おまえもなかなかお茶目だのう』
『……常にああいう醜態を晒してる訳ではありませんから』
『でも、これで国民もあなたをより間近に感じるのではないかしら。編集した方はなかなかのセンスをお持ちのようね』
母上までもが褒めてらっしゃるが、私は断じて認めない。
『これでは威厳などどこかに飛んでいってしまいます』
『そういった時代ではないと私は思いますよ』
母上はにっこりと息子である私に微笑まれた。
『玉座に座りただ威張り散らしていればいい時代など、数百年前に終わっている。今は民と意を一つにして共に歩むものです。父上はそれが叶わなかったけれど、あなたにその夢を託したの――カイ。あなたには新しい時代に相応しい形の王制を担って欲しいの』
母上の微笑みはどこか寂しそうで、けれどあたたかい。おそらく最愛の夫へ想い、そして息子である私への想いからだろう。
常に病床にあった父上と過ごした時間はあまり多くないが、私は確かに大切なメッセージを父上から受け取っていた。
『はい、母上。私はきっと父上の遺志を継いでみせます。父上の願いを無駄にしないため、1年で宮廷を変えてみせます』
手始めに、反撃の狼煙としてこの番組を使う。私が見つめていると、遂に後半が始まる。
そして初っぱなから出たのが、シュトラウス公爵が関わった医療機関の案件について。
治療費が払えない一般人に未認可未承認の治療や薬を施し、それで臨床データを集めていたという疑惑だった。