Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
医療関係の疑惑については私も把握していた。私に成りすました雅幸がある程度調査を進めていてくれたからだ。
だが、国内で未認可の医薬品を使用していたとは。
まだ国が認可していない医薬品を使用すること自体は、医者の判断のもとにはっきりした説明と治療目的等の条件が満たされた上で、自己責任ならば仕方ないと言える。認可を待っていては救えない命があるのも事実だからだ。
だが当然法律的に厳しい制限がかかる上に、自費だから高額とならざるを得ない。
そんな薬を無料で提供し治療の役に立つように促す――シュトラウス公爵の縁者が運営していた病院では、そのことが当たり前に行われていた。
一見、素晴らしいボランティア行為に思えるだろう。治療費が払えずに治癒をあきらめていた人たちが、未認可とはいえ手が届かない薬を無料で投与され救われるのだから。
だが、実際はそんな心暖まる話ではない。
その病院は、終末医療に積極的に取り組むことで有名だった。
つまり、余命幾ばくもない人たちに未認可の薬を投与していた。それだけで倫理的に問題はあるが、問題の本質はそこではない。
もっとおそろしいことは、治験すらまともに終わっていない薬や、明らかに治癒とは無関係な医薬品まで投与されていたこと。
そして――対象にされた患者の入院してからの死亡率が異様に高く、平均の日数が非常に短かったこと。
つまり……
やつらは死を目前にした患者をモルモットがわりにして、人体実験をしていたのだ。