Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
『“噂”とは、人体実験の目的です』
いつの間に控えていたのか、アレックスがソファの後方で微動だにしないまま、解説を付け加える。
『“どのようにすればどんな病気を引き起こすか”“どんな症状を起こすか”――病死や自然死に見せかける殺し方。そして、病気を引き起こす方法。それから――最も重要なのはこちらでしょう』
アレックスが差し出した資料を手にする。初めて目にするそれは、専門的な内容ですぐには理解し難い。
『意識レベルについての評価……? 投薬の結果で必要なことなのか?』
パラパラと捲っているうちに、私は手を止めざるを得なかった。
『……これは』
指が、いや。身体が震える。
あり得ない……だが、これは現実なのだ、と。アレックスの瞳が物語っていた。
『父上が……投薬されていた?』
『はい。その裏カルテは嘘偽りなき本物です。グスタフ殿下はシュトラウス公爵の縁談を断られたため、薬の投与をされました。
――人を潜在意識レベルで意のままにする薬物の、です』
アレックスの口から真実が告げられた瞬間――すべてが止まった気がした。