Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
祖父が厳しい顔をしていた理由が、今はっきりと解った。
頑張って生きようとしていた息子の命が、薬物によって奪われたのかもしれないのだから。
確かに、父上は心臓を患い体も弱かった。だが、本来はもっと生きられたはずなのだ。その命を縮めたのは確実にやつらによる投薬だろう。
無意識に合わせた指が、ブルブルと震える。噛みしめた唇が切れたのか、口の中に血の味が広がった。
『……王族すら、ただの駒や障害物としか見なせない。そのような連中を放置していては、私は最愛の人を迎えることなど永遠に出来ませんね』
『残念だが、現実はそうなる』
祖父は冷静に返してきたが、おそらく内心は煮えたぎる想いを抱えていらしただろう。
『……よく、わかりました』
番組が終盤に入ったところで、私は立ち上がりアルベルトへ指示を出した。
『アルベルト、公式発表の準備を整えろ。それから各国首脳部へのホットラインを繋いでくれ』
『はい』
すぐ後ろで控えていたアルベルトは一礼をすると、それぞれへ指示を出すべく他の侍従を呼ぶ。次に私は反対側へ顔を向けた。
『アレックス』
『はい』
『あなたのマスターの協力を正式に要請したい。仏心など出していては、犠牲が増えるばかりだ。一気にケリをつけよう』
『承知致しました。あなた様のご決断を、マスターは支持なさるでしょう』
アレックスは恭しく頭を下げると、マスターへ連絡するためか一度部屋を出ていく。
もはや、猶予はない。父上と同じ悲劇を繰り返さないために、タヌキを徹底的に追い詰める。そう決意した。