Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
私がすぐに梯子を昇りベッドへ乗り込むと、案の定桃花が苦しんでいた。
ギュッとシワを刻む眉間に歪んだ口元。何かから逃げるように体を捩り、手のひらはギュッとベッドの枠を掴んでいて。滝のような汗が流れた顔は真っ青で、体が痙攣するように小刻みに震えていた。
日本語で、何度も何度も同じ言葉を叫ぶ。まだ習ってない単語で意味はわからないけど、良からぬ意味だというのは解る。
荒々しい呼吸を繰り返し救いを求めるように伸ばされた桃花の手を、私は両手でしっかりと握りしめる。
『大丈夫……だから、僕がついてるから』
ドイツ語が通じるはずもないけど、私は無我夢中で桃花を励ました。自分の存在が彼女の救いになればいいと願って。
何歳も年上の女の子だったけど、桃花が可哀想で仕方ない。空いた手でゆっくりと髪を撫でれば、次第に彼女は落ち着いた様子を見せて。
30分ほど2人きりで過ごせば、桃花の寝息は穏やかなものへと変わった。