Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
『罠は仕掛けた。後はヤツが自ら動けばいい』
国王陛下への謁見を禁じた以上、陛下の懐柔作戦は実行できまい。もとより、陛下をこれ以上巻き込みたくはない。
これは、私がすべき戦い。これからのヴァルヌスの未来(さき)を担う者としての責務なのだ。
アレックスの協力のもと、シュトラウス公爵の周囲には既に細工をした。じわじわとやつを追い詰めるように。
アレックスの手の者と、罪の軽減を交換条件として協力させた者たちが動くだろう。
気が付いた時には八方塞がりで逃げ場などない。その時どうするかが見ものだ。
追い詰められた人間は最後の足掻きをするかもしれないが、恐れることなどありはしない。
『公安と警察が正式に動くと長官から報告があった。どうやら陸軍の一部を無断で動かしたらしい』
電話で報告を受けた祖父に渋面を作らせてしまった。今は、午前5時――朝刊が各世帯に配布される時間だ。
タヌキが一面記事の差し替えを圧力で取りやめさせようとしただろうが、こちらの手の者を各社に派遣してあったのだ。力づくや脅しでは屈しないようにと強く要請しておいたし、新聞社の編集部には使命感を思い出して頂いた。“ペンは剣より強し”という言葉を。
ヤツが無駄な足掻きをしている間に、ゆっくりと退路を塞いでいった。気づけば孤立無援になった気分はどうだ?
だからか、焦ったのだろう。陸軍はヤツの息子が入ってそれなりの地位にいる。その伝で最後の抵抗を見せたらしい。