Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編



シュトラウス公爵は頑固な抵抗を見せた。最後の悪あがきで息子の部下達に活路を開かせようとしたらしいが、日頃から傍若無人に振る舞っていた公爵の息子に、命を賭けて着いていく者などいない。


大した実力も実績もないのに大佐まで昇り詰めた息子だが、所詮は親の七光りに過ぎない。
親の権力を笠にやりたい放題で、わがままな上に気分屋。気まぐれで理不尽な命令を下し、次の瞬間にはなぜそんなことをする必要があると殴る。そんな男に人望などあるはずもなく、陸軍の皆に慕われる上官の説得でシュトラウス公爵のそばにいた兵士達は次々と投降。下士官も投降すれば、残るはタヌキとバカ息子だけ。


電車内で親子2人どんなやり取りをしたかなど知りたくもないが、想像など容易につく。


バカ息子が喚きたてて親を責め、タヌキはタヌキで息子を非難するのだろう。お前が悪いという責任の擦り付けあいと、醜い罵りあいの堂々巡りだ。


罪悪感や良識など抜け落ちたやつらのことだ。エンドレスで何の生産性もない愚かなやり合いしかしないだろう。


そして、“なぜ自分が、なんでこんなことに”と我が身の不幸を嘆き悲しむだけだ。この期に及んで、肉親を庇うこともなく己の助かる道だけを模索するのだろう。


たとえ、血が濃い肉親を生け贄に差し出そうとも。


何とも醜く、哀れな人間だろう。


――シュトラウス公爵と息子の身柄を確保したとの連絡があったのは、午後遅く日が落ちてからのことだった。


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