Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
それからの3ヶ月が最も大変な時期だった。
何せ、有力貴族の半数は当主が逮捕されたり縁者が犯罪者であったりしたものだから、政界どころか国を支える根源が相当揺らいだことは否定しない。
だが、いくら批判を浴びようとも、怨恨を買おうとも。私は自分のしたことに後悔はない。確かに本人に責任は無くとも不幸にしてしまった人間がいることは否定できないが、そういったケースはなるべく経済面でフォローするようにしておいた。
これは、国を腐らせる前に必要な荒療治だ。それには相当な痛みを伴う事など百も承知している。その責任は全て私が負う。たとえ銃口を向けられようと、私はきっと笑って「悔いはない」と言い切れるだろう。
……もっとも本当に命を失っては桃花に会えないので、本末転倒だが。
政治や行政のシステムを変えるために、相当な無茶をしたかもしれない。百年続いた旧来のやり方を強引に変えるのだから、やはりかなりの反発はあったが、最終的には話し合いで決着を着けた。時間は掛かってしまったが、不満を力で押さえてしまえば、必ず倍返しで跳ね返ってくるのがわかっていたから。
次の半年で徐々に新しいシステムに馴染ませ、それぞれのすり合わせを終えてよりよい方向へと向かわせる。
その間にもゆっくりとだが徐々に私の人となりを知ってもらうため、地方首長や有力者に定期的に共に仕事をする機会を与えた。
最初は警戒していたのも無理はない。あれだけ大貴族だったタヌキを落としたのが私だと皆が知っていたのだから。
しかし、時間を掛け真摯に接すれば誤解は解け、やがて親しみのある笑顔を向けてくれる。王子という身分抜きで評価してくれる人には、それなりの友好を結んだ。
そして、約束の1年が終わる頃。ヴァルヌスの国そのものが確実に変わった。