Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
「桃花ちゃんはあと3ヶ月で調理師学校を卒業するわ。こちらへ来る話も受けてくれた」
「……そうか」
富士美の報告を聞いて、安堵のあまりに目を閉じる。 ようやく、君に逢えるのだ。
「で、当然議会の承認は取ったのでしょうね? 特に石頭のアルベルトには」
マリアが最も触れられなくない部分に切り込んできた。それに関しては、まだ色好い返事が出来ていない。
「いや、まだだ。議会と妃選定会議の承認を得る自信はある。だが、アルベルトに話をしようとしても最近あまり機会がないからな」
最近、避けられてるのか? と思うくらいにアルベルトが姿を見せないのだ。彼との共闘で議会と中枢部は改革が進み、相当数な議員の浄化と世代交代が進んだ。この1年朝な夕なに共に過ごしてきたのだから、急にそうなれば違和感が募る。
それを聞いた富士美とマリアが顔を合わせた後、なぜか両方とも肩を竦めた。
「カイ……それ、本気で言ってるの?」
マリアが何だか残念な子を見るような目付きで私を見るが……またヘタレと言われているようで腹立たしい。
「どういうことだ? アルベルトは確かに私の侍従長だが、彼のプライベートの隅々までをも把握するつもりはない」
「やれやれ、無駄にプライドだけは高いのねえ」
富士美までが盛大なため息を着く。何なんだ? 異国にいた皆が知っていて、この国で彼のそばにいた私が知らないとは。悔しさがじわじわと込み上げてくる。
やがて、富士美がポツリとこぼした。
「……アルベルトはね、今日本に来てるわよ」