Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編




アルベルトが日本へ渡っている、という情報は初耳だった。今までその様なことがあれば、彼は必ず私への報告を怠らなかったのだが。


「もしやシュトラウス公爵……いや、もと公爵の関連で日本へ渡ったのか? しかしそれならばなぜ私に隠す必要がある」


シュトラウスについてはあまりに犯罪に手を染めていたため、貴族としては公爵の地位を剥奪の上に財産没収という処罰が下された。無論本人は逮捕され、関わった親類縁者は全て何らかの罪で捕まり服役中だ。


やつらは議会どころか二度と公の場に出られないだろう。社会的にも抹殺されたようなものだ。


ただ、王孫のフランツのみはまだ15と若年な上に、何も知らなかった。ゆえに、祖父は彼に伯爵の地位を与えようとしたが。彼は彼ゆえに思うことがあったのだろう。爵位は受けられないと断ってきた。


その一番の理由が、祖父のしでかした罪が重かったこと。そして、二番目の理由は意外なものだった。


「バカねえ。あの堅物だって人間だった――男だったってことよ」


マリアが呆れたように、私の知らなかった事実を暴き出す。


「そうだよ~一番間近だからこそ知らなきゃ、カイ。アルベルトは日本の女の子に夢中なんだから~」


雅幸のふざけた物言いに、最近聞いたフランツの独白が重なる。


“彼女は、一般人なんです。すごく内気で控えめな……きっと貴族になってしまったら口もきいてくれませんから”


はにかみながらも初恋を打ち明けてくれた彼は、もはや少年でなく一人の「男」の目をしていたのだ。

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