Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編






あれから季節が確実に移ろい、ヴァルヌスの首都は雪に包まれた。ベルンハルト城の王太子宮の一室では、桃花が編み物をしている。


幸せな景色。


私たちの初めての子どもとなる3人の天使は、どちらに似ているだろう?名前はなんとつけようか。


考えるだけで楽しいが、私はちょうどいいと長椅子から立ち上がりあるものを桃花へ差し出した。


「桃花、これを憶えているか?」

「え……これ」


毛糸と編み針をテーブルに載せた桃花は、手のひらに赤い実を載せてしばらく眺めていたが、やがてハッとなって私を見上げた。


「これ……南天の実。雪うさぎの目に使うものだけど……まさか、カイ……これって」


目を見開いた桃花の表情から、彼女がはっきりと記憶しているのだと解った。


そして、彼女が急にぼろぼろと大粒の涙を流すものだから、まさかトラウマを思い出させたかと焦る。


「桃花、大丈夫か? もしかすると嫌なことを思い出させてしまったか?」


心配になって膝まづいた私が桃花の背中を撫でると、彼女はゆっくりと首を左右に振った。


そして、こう言ってくれたのだ。


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