Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
カイ·フォン·ツヴィリング……ツヴィリング王家唯一の王子で能力も人望もあり、望ましい後継者ではあるが。唯一の欠点が女に対しヘタレという点だ。
女がちょっと体調を崩しただけで大騒ぎし、日本から医者を呼び寄せようとするわ。仕事を放ったらかしであちこち買い物に走るわ。てんで駄目で話にならない。
女とちゃっかりやることはやって、婚約発表より前に懐妊させておきながら、父親になると判った途端にしまりのない顔をあちこちに晒した時は勘弁してくれと言いたくなった。
他の侍従どもから毎日のように泣きつかれ、そのフォローに私がどれだけ奔走したか。あのヘタレは全然解っちゃいないだろう。
頭の中がお花畑の主人は今日も私の厭味など耳から素通りしてる。間違いなく私には見える。
侍従長としては決まりきった仕事をきっちりこなしながら、カイ殿下の生活公務全般が円滑に行くように心を砕かねばならない。主人の頭に花が咲いていても、きっちりと公務も政務もこなさせなければ。
浮かれきったカイ殿下の手綱を握りしめ、うまくコントロールして仕事をさせる。
「早く桃花様に会いたいならばその分早く終わらせてください」
わがままのために貯めた2日分の書類を執務机に積み重ねてやったら、カイ殿下は不満げな顔をしたが。
「明日24時間ノンストップでお仕事をなさりたいならば、もうお帰りになってくださって結構です。もっとも彼女とは一秒と会えなくなりますがね」
当然なことを言って差し上げれば、カイ殿下は猛烈なスピードで書類を片付け始めた。
やればできるなら最初からきちんとやってくれ! 言いたい言葉は喉で飲み込んだ。