Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
しかし、そもそもなぜ私が荷物持ちをせねばならないのだ?
「なぜ、私がこれを持たねばならない? 身分の差から言えば」
「ここはあんたの国じゃない、日本だ!」
ビッ! と雪菜がまた人差し指を私の目の前に出し、見上げてくる。
「いいか? 今の日本じゃ現状はどうあれ、建前上は身分差なんてないんだよ。だから、あんたがお貴族様だろうがなんだろうが、ここは男として女を気遣うところだろ。それに、あんたたちヨーロッパの上流階級じゃレディーファーストが常識だろ? なら、文句言わず持ってろ!」
あまりにも幼い上に身勝手で支離滅裂な言い分に、呆気にとられてしまった。身分差がないと言いながら、性別を盾に従属を強要するなど。自分の都合のいいようにねじ曲げて解釈し過ぎだ。
それに、ヨーロッパの上流階級ならというが。自分は違うではないか。相手に身分差を使わせないのに、自分は上流階級の利を得ようとする。バカバカし過ぎて、思わず半笑いをしてしまったのだろう。雪菜から胡散臭げな目で見られた。
「なにニヤニヤしてんだよ、気味悪いやつ。ほら、行くぞ。好きなの選べよ」
そう言って連れてこられたのは、色とりどりの小袋が陳列された棚の前。ベビースターラーメンだの、うまい棒だのと書いた見慣れないパッケージに困惑していると、突然ずい!っと茶色いパッケージが差し出された。
「やっぱ男なら、これだろ。ホームランバー! 当たりが出たらあたしにくれよ」
「はあ……」
「これ、どうだ? チロルチョコ。アポロにたけのこの里……やっぱしポテトチップスははずせないよな」
雪菜はひょいひょいとかごに菓子らしき小袋を入れていく。ひとつを手に取ってみるが、いったいどんな菓子なのか想像もつかなかった。