Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
雪菜に勧められ、ワサビーフというポテトチップス、カラムーチョ、よっちゃんイカ、クッピーラムネ、ホームランバーEtc.を買った……というか、押し付けられた。
「あとは飲み物だけど、やっぱこれははずせないよな」
そう話しながら雪菜が手にしたのは、ラムネとカルピス。カルピスという名前は耳にしたことはあるが、味わったことはない。
「ま、こんなもんだろ。ほら、レジしてくるからそこで待ってな」
財布を出した雪菜は私からかごを奪うと、さっさとカウンターへ向かう。はっと我に返ってすぐにいかせまい、とかごの縁を掴んだ。
「そんな訳にはいかない。その程度の金額を支払えないと見くびられるとは屈辱的だ」
「だ・か・ら~! ここはあたしが奢るってんの。人の好意は素直に受けろ」
レジまであと数歩の場所で、雪菜は不快そうに眉を寄せる。そんな彼女に反論しようとする前に、レジがあるカウンターから女性のひそひそ話が聞こえてきた。
「ねえねえ、次の被害者はあの外人さんっぽいね」
「え~かわいそう! モデルってくらいカッコイイのにお気の毒さま」
「幸村さんもあんなのなのに、よくやるよね。ってか、あれわざとでしょ。あんな外見で実はサセ子ってギャップがいいのかね」
「ねえ~また人の男だから目をつけたんでしょ。ほんとビッチだよ」
たぶん、“胸くそ悪い”話なんだろう。雪菜は一瞬目を伏せて歯噛みしたが、すぐに顔を上げてつかつか歩み寄ると、だんっ! とかごをレジカウンターへ置いた……私ごと。
「レジ、お願いしますね。あ、社割はいらないから」
にっこり、と音が聞こえそうなほど満面の笑みで、雪菜は店員に言い放った。