Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
雪菜~アルベルト2
「じゃじゃ~ん!」
……効果音を自ら発する人間なと初めて見た。
雪菜が両手を広げて笑いながら、得意満面な様子で私に言う。
「ほら、すごいだろ! あたしの秘密の場所なんだ。招待したのはあんたが初めてだかんな。光栄に思うがよい」
「……はあ」
思わず気の抜けた返事になってしまうのも無理はないだろう。“とっておきな秘密の場所”と言うから、それこそ誰もが認めるような最高の場所と思えば。
雪菜に連れてこられたのは、何て事もないただの河川敷。
しかも綺麗に整備されているとは言い難く、申し訳程度に道がありもと公園らしき場所がかろうじて確認できる程度。土地は広いのに、無駄な空きスペースが多すぎて辟易した。ヴァルヌスでは平地が少なくて苦労しているのだ。ずいぶん贅沢なものだと思うが、ここは日本なのだと怒りを収める。
それより雪菜が勧めるくらいだから何かあるかと思えば、川には車と鉄道が通る鉄橋がかかり、あとは見渡す限り雑草が生えてるだけ。なにか建物やオブジェがある訳でもなく、なんの価値があるのかまったくわからない。
「ここに何の価値が?」
「だ~! やっぱそうきたか」
がしがしと髪の毛をかきむしった雪菜は、もう! と肩を怒らせ腕を組んで私を睨み付けた。
「やっぱ、あんた貧しい視点しか持ってない。このままじゃかわいそうだから、あたしが教えてやるよ。こんな何もなさそうな場所でも、本当は素敵だってことを」
雪菜はそう言い切ると、私が手に提げていたビニール袋からフィルムカメラを取り出した。いわゆる使い捨てカメラというものだ。
「はい! これを使ってあたしの言う通りに撮ってってよ」