Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
「あ、またあたしを笑いやがったな! 見てろよ。ぜったい、ぜったい、ぜ~~ったいあんたを指差して笑ってやる!」
ダンダンと地団駄を踏むものだから、アオサギがピクリと顔を動かした次の瞬間。羽を大きく広げて飛び立ってしまった。
私には静かにと注意しながら……と呆れたが。先ほどの余韻も尾を引いていたから、そのまま肩を揺らし忍び笑いをする。雪菜は真っ赤になって、涙目で睨み付けてきた。
「くっそぅ! 悔しい~ちょっと、こっちに来なよ」
雪菜は灌木の間を抜けて川辺に出ると、新聞紙を取り出して草の上に敷くとそこへどっかりと座った。
「ほら、あんたも座んな」
「……これは拾ったものでは」
あのショップのダストBoxに突っ込まれていた新聞紙だ。雪菜はそれを抜き取って持ってきたのだが、いったい何に使うのかと思えば。シートがわりに利用するとは。あまりに不潔で眉が寄る。
「このようなもの、衛生上問題がある。きちんとパッケージされたシートを用意すべきだ」
「うっさい! 人間これくらいじゃ平気さ。お上品ぶってないで、さっさと座りな」
雪菜は私の腕を掴むと、女とは思えない力で引いてくる。不意を突かれた形で、よろめいた私は不覚にも彼女の隣へストンと腰を下ろす。
「……」
無言で腰を浮かしハンカチを広げようとすれば、それは雪菜によって阻止される。
「だ~か~ら! そんな神経質になるなって。ぶはっ!どこのお嬢様だよ、あんたは」
さっきの逆襲なのか、雪菜は腹を抱えて笑うが。何が可笑しいのか私にはさっぱり理解不能で、不愉快な思いをしただけだった。