Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
涙を流しつつまだ笑う雪菜は、バン! と私の背中を叩いた。
「いや、あんたも案外面白い。大真面目にボケて、しかも天然っつうのがポイント高いわ~」
「……若年性痴ほう症になった憶えなど無いが」
「ぶはっ! 違うって。ボケるってのはおじいちゃんが「お昼はまだかね~」「さっき食べたでしょ」っていうあれじゃなくて。漫才でいうボケとツッコミだよ。わざと面白い間の抜けたことを言って、鋭い常識的な指摘をされることさ。
ウケを狙ってわざとするやつが多いけど、あんたは素でやるから面白いんだ」
ポンポンと肩を叩かれて、何だか馬鹿にされているようでムッときた。
「私は天然記念物の珍獣ではない」
「ぶほっ!」
雪菜は遠慮なく噴き出すと、そのまま腹を抱えてしゃがみこむ。もう駄目だ! と全身を震わせ爆笑している姿が理解不能。私のどこに笑う要素があったというのか。
雪菜が笑いをおさめるまで、おおよそ30分。無駄な時間を過ごした、と立ち上がろうとすると、彼女はごぼごぼ噎せながらスーツの端を掴んできた。
「わ、悪かったって。座りなよ、ほら。あんたにはジャイアントカプリコのイチゴをやるからさ」
ピンク色のパッケージを押し付けられて、そのまま新聞紙の上に座らされた。