Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編



正直な話、雅幸の提案に乗るつもりはなかった。


表向き雅幸は“自分の可能性を試したいからだよ~”などどうそぶいてはいたが、彼が将来的に日本の政治家を目指していたことは解ってた。だからという訳ではないが、ヴァルヌスの良い部分を学ぶにはよい機会だと最後には納得したが。


その頃の私はまだ桃花とどうこうなりたい、という希望など何も持ってなかった。


マリアと雅幸は既に両家公認の仲で、マリアが高宮家に嫁ぎ日本に帰化することは決まってた……というか彼女自身が決めていた。雅幸はへらへらと笑って婚約者の尻に敷かれていたが、まあお似合いなんじゃないかと思う。


雅幸の腹黒さも当然マリアは理解していて、恐ろしいことに彼の先回りをして行き過ぎを止める。マジ顔で汗をかきながらマリアにひたすら謝る雅幸の姿も、もはや見慣れたもので。何だかんだと上手くいってる2人だった。


そんな仲睦まじい(?)2人に触発されて、桃花のことを思う時間が増えていくのが我ながら不思議だったけど。


マリアと雅幸が微笑みながら家族と将来(さき)の話をしている姿を見て――心底羨ましい、と感じてからやっと自分の感情に気付いた。


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