Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
おかしい。症状は和らいだはずなのに、なぜ再発するのだ?
なぜ、首から上が熱を持ったように火照る?
なぜ、呼吸が勝手に乱れる?
なぜ、心臓の鼓動が速まる?
なぜ、表情筋が言うことを聞かない?
なぜ、こんなにも落ち着かない気分になる?
なぜ、手のひらを握りしめそこが汗ばんでいる?
無表情が保てずに、いちいち雪菜の動きに過剰に反応しそうになる。熱中症な上に神経過敏だ。早く水分をとらねばと手にした青と白のカルピスウォーターと書いてあるペットボトルを開く。
その瞬間、甘ったるく爽やかな香りが鼻を突き抜ける。乳酸飲料独特の香りに固まって原材料を見れば……やはり、乳製品が使用されていた。
(牛乳が……)
これでは、口にすることができない。無意識に困惑した表情になってしまったのだろう。雪菜が気がついたらしく、さっと私の手からカルピスウォーターを奪い、代わりに持たせてきたのがラムネだった。
「もしかすると、あんたアレルギー持ち?」
「…………」
答える義理はないが、どうやら言わずとも察してくれたらしい雪菜は、パンッと私の背中を叩いた。
「恥じることはないさ! アレルギーなんてなりたくてなるもんじゃない。……ってか、さっきのカプリコ大丈夫だったのか?」
「あの程度なら問題ない」
思わず、答えてしまってから口をつぐむ。何を自然に会話をしているのだ、私は。しかもこんなよそに明かしてないプライベートなことを。苦々しく感じながらも、心底嫌だと思えないのが不可思議だった。