Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
(……そうか……僕は……桃花が)
またマリアにしばかれる雅幸の、仲睦まじい(?)様子を見ていたら。自分も桃花と……と想像していることに気付いた。
もちろん、雅幸の様に笑いながら桃花にしばかれたい訳ではないが。
ハッキリ言えば、桃花とはろくに会話も交わしたことはない。初めて会った時もただガラス越しに笑顔を見ただけで、後は悪夢に魘される彼女を励ましてきただけだ。
けれど、知ってしまった。
自分のハッキリした気持ちが、何であるかを。
(……話したい)
桃花と、話したい。彼女の温かな笑顔が見たい。自分のことを知って欲しい。彼女のことを知りたい。そしてできればずっと……。
わき上がる抑えきれない衝動と、激しい感情。十数年生きてきて初めてのそれに堪らなくなって、着ているシャツの生地をギュッと握りしめた。
(……会いたい)
会いたい。眠っているだけでない、桃花に会いたい。
たったそれだけ。それだけのシンプルな動機で、私は日本行きを決断した。
無論、それに伴うリスク等もきちんと考慮した上で。
そして、それぞれの身代わりを演じるために療養という名目で1年の猶予を設け、それぞれ上の学校に進学する。
けれど、様々な事情で桃花と本当の再会を果たすのはだいぶ後になってしまっていた。