Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
「アハハハ! 逃げられてやんの~」
見ていたらしい雪菜にちゃっかり笑われて、ムッとくる。
そういえば、彼女は指さして笑ってやると悔しがってたのだと思い出した。意外と根に持つタイプだなと思いつつ、それでも彼女を本気でたしなめたり出来ないのはわかっていた。
「いっか? 小魚を狙うならそんなふうに川に直接入っちゃ駄目だ。特にあんたが狙ったのはすばしっこいやつだからさ」
雪菜は何を考えたのか、先ほど休んでいた場所へ戻ると何やら作業を始める。しばらく待っていると、「できたぞ」と差し出してきたものは、空になったペットボトルを切って加工したもの。
「セルビンって、簡易的な仕掛けさ。これで捕獲するよ」
「……はあ?」
思わず疑わしい声が出たのが気に入らなかったのか、雪菜はあからさまに怒って肩を怒らせる。
「見てろよ、さっきのオイカワを絶対捕獲してやるからな」
ビシッ! と指さし宣言されても、なぜそんなに意地になるのか理由がわからない。
「それでは、お手並み拝見」
「ムカつく! 絶対ぎゃふんと言わせてやるからな~」
雪菜は足取りも荒くざばざばと水しぶきを上げながら川に入っていくが……それで既に魚が逃げるということは頭にないのだろうか。
(あんな仕掛けで捕獲など無理だろう。魚だとてバカではない)
胸中では馬鹿らしい、と軽んじていたのだが。
――30分後。
「いえい! ほら、どうだ~! ちゃんと捕れただろ」
先ほどの小魚が入ったペットボトルの仕掛けを手に、得意げな笑顔の雪菜がいた。