Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編



幸い私と雅幸はヴァルヌス王家の特徴が強く出ていて、顔も背格好も声もよく似ていた。だから、母上のいる離宮でちょっとした療養という名目で雅幸が滞在しても、遠目からならばカイ王子だと十分に誤魔化せた。


無論、唯一の王位継承者が療養目的で1年も姿を現さないのは不自然だし、様々な憶測を呼び邪推する者も出るだろう。だから、それなりの対策は必要だった。


元々雅幸はドイツ語が堪能だったし、御曹司として様々な教養やマナーを学んでいる。だから、後りは私に成りすますための知識を得るための準備期間として割り当てられた。


一方の私も、日本語に長けていて日本の風習や風俗を学んではいたものの、いざ暮らすとなれば戸惑うことが多い。


ヴァルヌスの外交省と外交大臣経由で、日本の外務省と警察庁に身辺警護の依頼もなされた。そこまでする必要があるのかと思ったが、小さな国とはいえ仮にも王子が滞在する。あくまでも極秘のそれらに、負担や迷惑を掛けて申し訳ない気持ちもあった。

だから将来的には恩返しとして日本と厚い親交を結び、報いてみせると決意をする。


不用意な外出は警護の負担を考えるとできなかったし、かといってごく普通の十代の少年が閉じこもっているのは我慢はならない。


それだから、葛城が所有するマンションのひとつをヴァルヌス王家が購入し、私を住まわせる他母上の里帰りの拠点とすることは自然な流れだった。


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