Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
もっとも、日本に報いる為には直ぐにでも利益を得させるのが一番だったろう。ヴァルヌスからも様々な共同事業の話はあったが、一番はレアメタルの優先取引について。
今から十年ほど前はインターネットもかなり普及していたし、スマートフォンは無くとも移動型デバイスとして携帯電話や他のハードウェアがあった。
いずれパソコンに代わる新しいデバイスの出現は予測出来たから、ヴァルヌスの様々なレアメタルの優先権は悪くない取り引き材料だったはずだ。
警護もヴァルヌスで徹底的に訓練した東洋系の血を引くSPを登用した。自分のわがままで日本の貴重な血税を遣わせる訳にはいかなかったから。
息苦しい生活は覚悟してはいたものの、表向きは高宮 雅幸として普通の生活をする。
幸い進学した中学校は雅幸の暮らしていた街からかなり離れていたため、知らない人ばかりに囲まれてのスタートだった。
1年病気療養したいう名目で、年下の同級生との付き合いもあったけれど。ヴァルヌスの宮廷とは違う。ここでは“カイ王子”という目で見られない。身分や血筋は多少気にはされるが、スタートラインは全て公平で。差別などあり得ない。
初めて“普通の学生”となった私の前に現れたのが、桂木だった。
――そして、彼こそが桃花と再会するきっかけを作ってくれた。