Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
やはり、桃花も私に思うことがあったらしい。何も考えずに日々流されるまま生きてるだけ、と1年前は彼女を軽蔑すらしていたものだが。
「そうおっしゃるのも当然でしょう。わたくしはあなたに疑念を抱いておりました。ずいぶんと失礼な態度を取り続けた自覚はあります」
「それは、カイ王子のためですよね?」
「はい。申し訳ありませんでした。心よりお詫びいたします」
床に膝をつき軽く頭を下げると、桃花より焦りを含んだ声を掛けられた。
「そんな……あなたも貴族なのですよね? こんな平民にそんなふうに軽々しく頭を下げてはいけないんじゃあ」
「確かに、わたくしは父が公爵の地位を賜る家系ではあります。ですが、わたくし自身爵位はございませんし、そもそもろくに事実を確認せず思い込みのみであなた様を粗略に扱った。そんな自身の浅慮は恥じるばかりです」
「……それほどおっしゃるなら、あなたの謝罪を受け入れます。ですから、もうこの件はおしまいです。それより、あなたのお話を聞かせていただけますか?」
桃花はすべてを許す、と口にしてにっこり笑う。私の稚拙な態度を怒りも責めもせず、相手を包み込むように温かい感情を向ける。
――これか。カイ王子が惹かれた理由は。
彼が桃花を手放したくない理由をハッキリと理解し、彼女なら任せられるとの判断は間違いないと確信した。
そして、私は桃花へと雪菜のことを洗いざらい話す。そうしたら、彼女は任せてくださいと笑ってくれた。