Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
雪菜~アルベルト4
私に任せてください、と桃花は言い切った。ちょうど明後日の日曜日に仕事が休みだから、雪菜を上手く誘うと請け負ってくれる。
“彼女を思うならそれまでに死ぬ気で仕事を終わらせろ”そんなメッセージを受け取ったように感じて、がむしゃらに頑張った。
翌日には警察や外務省を往復し、2日掛かる内容を1日で済ませた。寝る間も食事も惜しんで働く。睡眠は3時間とないが、雪菜のためならば徹夜も厭わない。
あくまでも公務なのだから、と用件を済ませた後はプライベートに切り替わる。それから公費を遣う訳にはいかず、ポケットマネーで宿泊費や必要経費を支払う。
日曜日、桃花が指定してきたのはとあるスーパーに隣接する喫茶店。そこは帰国前のカイ王子が桃花に密会しに来た店で、複雑な想いを抱えながらガラスのドアを開く。
そして……
店の奥に目をやった瞬間、今までにないほど心臓が跳ねた。
淡い水色のワンピースに身を包み、落ち着かない様子で雪菜が座っている。観葉植物で区切られた席には、もう一人の女が座っていた。おそらく美人な方なのなのだろうが、私にはどうでもよく些末な存在。
雪菜が、いた。
私を待ってくれている。
それだけで鼓動が速まり、すべてが乱れる。
こんな思いは初めてだった。