Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
桜花に依頼したのは間違いなく姉である桃花。適切な采配に感心して、必ずその恩に報いねばと強く思う。
カイ王子が宮廷改革の結果を出したのも彼女がいたからなのだ。異国人、ましてや一般人の彼女を迎えるために血を吐くような努力をされた。その原動力となった桃花をこれ以上排除などできない。それどころか、ここまで世話になって手のひらを返せば、恥知らずの卑怯者になるだけだ。
私だとて不義理をしたくはない。雪菜と再会するきっかけをくれた姉妹に感謝し、これからは自分の力で彼女を捕まえる努力をしようと意を決した。
相変わらず雪菜は固まったままで、驚いた表情で目を瞬いている。フリーズした思考を動かすべく、彼女へ揺さぶりをかけた。
「お会いしたかった」
「は……へ? え!?」
「あの日から1日たりともあなたを忘れた日はありませんでした。あなたの笑顔が心に焼き付いて離れません。その責任を取っていただけますか? わたくしの魂を魅了したあなたが」
もはや何を言っているのか理解不能なのか、雪菜はパクパクと口を魚のように開け閉めしている。少しずつ頬が染まっていることから、口説かれていることだけは理解しているようだ。
彼女へと請うような眼差しを向け、もう一度手の甲に口づけようとした瞬間。
「な、な、何をしやがるっ!!」
雪菜のゲンコツが、私の頭に炸裂した。