Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
「おはよう、高宮くん」
「……ああ」
「いつも早いよね。部活でもしてんの?」
「……別に」
朝一番に登校する私に、桂木はやたら話しかけてきた。桃花以外あまり関心がなくて、人と関わることを避けた私でもヤツは変わらずに関わって来る。
入学してからろくな部活がなかった中学校だが、一番マシだった美術部に入部したらなぜか桂木まで入ってきた。
「ねえ、高宮くん。悪いけど砂消し貸して」
基礎的な画力を養うコンテを使った静物画のデッサンの時に、忘れたんだ、と屈託なく話しかけてきた桂木。仕方なく砂消しゴムを渡せば、ありがとうな!と輝くような笑顔で言われた。
(……意味がわからない。たかだか消しゴムを貸したくらいで、なんでそんなに嬉しそうに笑うんだ)
人を遠ざけていた私だが、桂木はいつもこちらに寄ってくる。正直な話迷惑ではあったけれど、友達でなくとも一人位は間近に誰かがいなければ不自然だろう、と仕方なく接近を許した。
いつも桂木は朗らかで、人を寄せるタイプではないけれど。誰かがケンカをしていたら自ら仲裁に動く。だから、自然と人からの信頼を得ていた。