Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編



到着した時はまもなく日が暮れる時間帯だったから、その日はログハウスで簡単な夕食を取る。雪菜は魚を釣って焼くんだと息巻いていたが、薄暗い中で危険なことはさせられない。


小さなダイニングルームで事前に用意されたデリバリーの食事を前に、雪菜は「もったいないオバケが出るから仕方ない。食べてやるよ!」と奇妙なことを口走ったから、失礼ながら噴き出してしまった。


「あ、こら! またあたしを笑いやがったな!!」


むっきい! と猿のように歯を剥き出しにした雪菜は、私の分のチキンを素早く口に入れて「これは当然の報いだ!」とかモゴモゴ言う。それが余計に可笑しいのだが、当の本人はまったく解っていない。それだけに尚更面白い。


今の雪菜はホームウェア用の長袖のワンピース。紺色とグレーの地味なツートーンカラーは彼女には合わない。もっと明るい色を着るべきだろう。


今回は思いつきで招待したから間に合わせの既製品しか用意されていないが、家族に正式に紹介する時には相応の格好を。無論、彼女が嫌がらない程度にゆっくりと変えていくのだ。


幸い、雪菜には日本に親類縁者や親しい人間が居ない。彼女の決意1つでこちらへ招くことは可能だ。


もちろん、強引にではなく彼女の心を最大限に尊重する。そのためには何年待っても構わない。さすがに10年となると辛いが……おそらく、決意するのに必要な時間は長くて2~3年ほどだろう。


その間雪菜に忘れられないため、私は彼女に会いに行けばいいのだ。


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