Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
悔しがる雪菜を見れば、自然と笑いが込み上げてきた。
息詰まる宮廷や気を遣わねばならない実家とは違う。彼女と隣にいるだけで、自然と自分で居られる。
人間の容姿や顔の造りなど、所詮は“入れ物”に過ぎない。
確かに同じ内容なら美しい方が良いだろう。だが、私は見た目が華やかで美しい人間なら散々見てきたし、これからも日常的に目にするだろう。そうなれば慣れで麻痺してしまうものだ。“美しい”が“普通”に見える。
その点雪菜はその“普通”には当てはまらない。美の基準から言えば、決して美しいとは呼べないだろう。
けれど、彼女の個性的な顔立ちは美が溢れる日常で際立つ。今は可愛らしいとさえ思う。
彼女の魅力は顔の造りではなく、生きてるからこそのよく変わる表情。くるくるとよく変わり、素直に感情を表す。それだから、私には眩しいのだ。
釣った魚を焚き火で焼いて昼食にする。雪菜は気まずそうに食べていたが、お腹が空いたのか顔を赤くしながら2匹をペロリと平らげる。
午後は好きなことをして過ごそう、と決めたので私は木陰で持ってきた本を読み始めた。近くに設えたベンチはほどよい木漏れ日が落ち、さわやかな風が吹いて心地よい。雪菜はどうやら近くを探検しに行ったようだが、遠くに行くなと注意をしておくのは忘れなかった。