Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
「い、いいって! これくらい礼にもならないけどさ」
ってか、女装させようとしたと素直に告白してくれる。その率直さが私には心地よい。
普段から裏表を使い分けながら生活をしていると、だんだんと自分が解らなくなっていく。どろどろに汚れ澱んだものが、すべてを覆い隠して。本当の自分を無くしてしまいそうな恐怖。
おそらく私は、最も宮廷には合わない人間だ。親に期待され義務のようにカイ王子に仕えてきたが、自分の意思でか?と問われば、疑問を感じざるを得ない。
自分の感情や欲求を全て押し込めながら、年の近い王子に誠心誠意仕える。言葉では簡単だが、それがどれだけ不自然で無理難題か。6つの子どもでも理不尽さを感じたものだ。
カイ王子が好きにおやつを食べている時も遊んでいる時も常に側に控え付き従う。“なぜ、自分にはこういう自由がないんだろう?”そんな細かな不満や出せない負の感情は積もり積もって、やがて奥底で腐り澱みを作る。
不満はガスのように膨らむだけだ。どこかで抜かねば、いつか爆発する。
今の私はカイ王子に直接チクチク言うことでフラストレーションを解消してはいるが。
だが、それでも澱みを出しきれるものではない。
本来の自分を偽り仮面をつける裏で、どれだけ焦がれていただろう。
本当の自分を解放してくれる存在(ひと)を。
だから、私は雪菜に惹かれたのだ。