Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
『カイ殿下、あなたの妻であらせられる桃花妃殿下。かのお方の妹御様のご友人に、雪菜がいらっしゃる。彼女のお話がそのルートで出ていることは容易に察せすることはできます』
私が情報源を指摘すれば、カイ王太子は『だから、なんだ?』とひじ掛けに腕を起き、体ごと私へと向いた。
『確かに、桃花の妹である桜花は雪菜という親友がいる。桃花を通じてチラリとだが話も聞いていた。だが、私にそれだけと思うな』
見くびるなよ、と無言で仄めかされ、私はおやおやと肩を竦める。どうやらカイ王太子は私も知らぬ間に、独自の情報網を作り上げたらしい。それは多少寂しくもあるが正解だ。私も生身の人間である以上、感情があるように。裏切りという可能性を考慮する必要がある。
いくら私に裏切る気がなく天地に誓って裏切らないと宣誓したところで、未来など誰もわかりはしない。
個人の資質や信頼というものを抜きにして、人間対人間という揺れ幅のあるものに絶対というものはない。保険としてカイ王太子が私の与り知らぬ部分を持つのは当然の判断だった。
おそらく、既にそれなりに機能をしているらしいそれに感心しながら、あっさり認めた。
『はい。雪菜とは5年越しでお付き合いをしておりますが、まだ迎えるつもりはありません』