Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編





「……という訳でお迎えに来ました、雪菜。ヴァルヌスへ来て頂けますか?」

「…………」


何ヶ月かぶりに逢う雪菜は一瞬戸惑いを見せたものの、すぐに冷静な顔に戻り挨拶をしてきた。


「アルベルト、お久しぶりです。でも、順を追って説明してくれなくてはわからないでしょう?」


以前だったら感情のままに「意味が解らないだろ!」と怒鳴り付けてきただろう。しかし、今の彼女は違うのだ。


今の受け答えもそうだが、落ち着いた物腰や冷静な状況判断。そして、栗色のフワリと巻かれた髪に薄いメイク、控えめなグリーン地のワンピースと白いミュールという姿が彼女の変わり様をよく表している。


この5年。雪菜は生まれ変わるために死に物狂いで努力してきた。石にかじりついてでも、私の横に立ってもおかしくないように。


自分の欠点や短所を認めた上で、足りないものを克服し更に自分を磨き高める。言葉では簡単だが、成人した人間が凝り固まった“自分”を全て否定し作り替える作業というものは、相当な困難を伴っただろう。


けれど、雪菜は敢えてそんな難題に果敢に挑んだ。


当然、最初はかなり辛くて精神的に不安定になり、体調を崩すこともままあったらしい。


だが、彼女は文句や愚痴や泣き言など一切言わなかった。自分の未熟さを嘆いても、他人のせいにしたり逃げたりなどしない。その根性は私でも感嘆するほどで。


そして、今。雪菜はより魅力的な女性として生まれ変わったのだ。


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