Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編



やれやれ、と小さくため息を着く。


いつもは日本行きに渋い顔をしあの手この手で妨害してくる父上が、今回ばかりはすんなりと了承して下さったことは、絶対に裏があるとは考えていた。


この5年の間に私が頻繁に日本へと向かっていること、そして以前話した“恋人はヴァルヌス人ではない”という情報で、私の恋人が日本にいることは容易に察せたはず。無論、ハインツ公爵の力であれば、私の相手が誰だと調べあげるのは造作もない。


だが、と私は人知れず喉の奥で笑う。


(私がいつまでも従順だと思わない方がよろしいですよ、父上)


まず、カイ王太子の御祖父であられる国王陛下には、既に私の事情は話してある。国王陛下は息子の妃と孫の妃が日本人ゆえに、私の境遇に同情して下さった。“自分が出来ることあらば協力しよう”と、までおっしゃって下さったのだ。


そして、貴族議員や民間出身の参議の中にも私の協力者はいる。


身分や血筋でごり押しできるカイ王太子と違い、私はあくまで臣下。自分の身の振り方は全て自分で決めねばならず、また今までの因習を変えるには新しい道を自ら開くしかない。


それゆえ、5年の時間は必要だった。


カイ王太子殿下の妃の母国出身ということも、親しみを持てる要因になったことも感謝したい。


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