Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
「いいだろ、婚約者ったってさ~まだ結婚してないんだろ? なら、フリーってことで楽しめばいいんだ……ってかさ。今どき恋人だの夫にこだわんの、ふっるいし、だせぇって!
オレがさ~いろいろ教えてやるよ。オトコを悦ばす方法をたっぷりと……さ?
今どき、いい子ぶったって何の得もねえよ。楽しめる時にゃ楽しんで役立つお勉強しとかねえと、女としてすぐ飽きられるぜぇ?」
男は雪菜の拒絶にもめげずに、ニヒャニヒャ笑いを一層深める。そこで、初めて雪菜の瞳が不安そうに揺れた。
(……これは、不味いか)
ナンパ男の言うことなど支離滅裂で自分勝手極まりない理論を展開してるだけ。だが、雪菜の杞憂を引き出す何かがあったらしい。彼女は明らかに動揺を顔に浮かべていた。
そこに、手応えを感じたのだろう。ナンパ男は再び雪菜の肩へ手を置いて顔を近づけ(……るんじゃない! 汚らわしい)
焦燥感と苛立ちが募る。なぜ、雪菜は先ほどのように拒まないのだ? イライラしながら見守っていると、雪菜はポツリと呟いた。
「……やはり……男性を喜ばせるのは女性として当然……ですよね」
伏し目がちにそんな言葉を呟いた彼女を、今すぐ抱きしめたくてたまらなくなった。
(そんなことで悩んでいたのですか。私はあなたがどんな人になろうとも、まったく手放す気はありませんのに)
雪菜の不安を解消するためには、まずは話し合う必要がある。そう決意して足を踏み出すと……ナンパ男はとんでもない行動に出た。
「そうだよ。今どきヴァージンだなんてだせぇし、重いし面倒くさいだけだっつーの。さっさと捨てて、楽しいお勉強しようぜ……な?」
男が雪菜の顎を掴み、彼女へ顔を近づけた瞬間――
頭が真っ白になり、気がつけば男を殴り倒していた。