Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編




翌朝、眩しい光に目が覚めた。


『おはよう、お寝坊さんなアルベルト』


雪菜がクスクス笑う声が聞こえて、昨夜は我ながら手加減し過ぎたなと苦笑い。


仕方あるまい。ベッドに入る前に聞いた話が嬉しすぎて、彼女の身体に配慮した結果なのだから。


『雪菜、身体は大丈夫なのか?』

『ええ、全然平気。自分でも不思議なくらいいつもと変わらないの』


朝食作りでも助かるの、と微笑む雪菜の笑顔がいとおしい。軽くシャツを羽織った私は、彼女を抱き寄せて朝の挨拶をした。


『アルベルト……朝食が冷めちゃうって』

『少しくらいいいでしょう』


このフラットではハウスキーパーやメイドなどの使用人は置いてない。雪菜の希望でもあったし、私も新婚生活では2人きりの邪魔をされたくなかったから敢えて雇わなかった。


無論、両親はいい顔をしなかった。仮にも公爵家の子息が……と渋い顔をした両親に、私は期待以上の結果を残すと約束をして黙らせた。


雪菜と結婚をしたせいで仕事がダメになったとは言わせない。周囲を黙らせるには結果を出し続けることだ。ひいてはそれはカイ王太子の治世を守ることにもなる。


けれど、この喜ばしい報告はきっと両親の顔を綻ばせることだろう。次代へと繋げることができると知ったなら。


私は、雪菜の身体に手を回しそっとお腹に手を当てる。まだ宿って間もない命を感じながら、彼女に口づけた。


『……ありがとう、雪菜。君とこの子は私の光だよ』


そっと、腕の中にしあわせを閉じ込める。


冬に逢えるだろう我が子と、雪菜と、私と。3人で迎えるクリスマスはきっと素敵な思い出が出来るだろう。


来年も、再来年も、その先も。ずっと――。




(終わり)


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