Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編



到着した日の午後、まずは自由に過ごすことになった。私はスケッチブックを持ち、桃花に近づく機会を探る。


同じ場所にいるんだから、まずは昔のことを話してから謝って、その後は何とか親しく……と下心満載ではいたのだが。他の人たちが別荘から出てきても、桃花の姿が見えない。たまりかねて桂木に訊ねてみた。


「あ、あのさ……桜花だっけ? その子って姉妹で来てたよな。桜花は目一杯遊んでるのに、お姉さんの姿が見えないけど。体調でも悪いのか?」


桂木にバレぬように何気なさを装いながら訊ねれば、桃花は別荘の中で片付けと掃除を買って出たのだとの情報を得た。


(こんなときにまで……)


他の人間は好き勝手に遊んでいるというのに、薄暗い建物の中で地味な役割を果たしているとは。彼女らしいが、何だか腹立たしい思いになる。


(僕が……海に連れ出してやろう。桃花は絶対外の方が合ってるんだからな)


桂木の別荘は流石に30人以上が一度に泊まれるだけあって、かなり立派な創りになっている。お手伝いさんやハウスキーパーも雇ってはいるが、たぶん全てに手は回らないのだろう。桃花以外の数人も手伝っているらしい。


(よし! 僕も手伝うぞ)


半袖シャツの袖を捲り上げて張り切る。桃花が掃除をしていた廊下に、清掃道具を抱えて突っ走ろうとしたのに。


「カイ様! 自らのお手を汚す必要などありません。私どもにお任せください」


東洋人の侍従の一人+複数の護衛にことごとく妨害され、あっという間に外へ押し出された。


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