Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
うちの侍従や護衛は何だかんだと過保護過ぎる。
一応その時の私はごく普通の中学生になっていたのだから、それなりに振る舞わないと浮いてしまうというのに。
(……このままだと、桃花と話すこともできないじゃないか)
自分のヘタレさと空回り具合にず~ん……と落ち込む。たぶん、暗く重苦しい影を背負っていたはずだ。 現に、一人の女子が私を見て声を掛けてきたんだから。
「ちょっと、ちょっと。あんた、マリアナ海溝より深く落ち込んでない? マイナスな空気がダダ漏れだよ」
オレンジ色のセパレート水着の上に、薄い緑色の上着とやたら明るい色彩の女の子。初めて見たが、ずいぶんとこんがり肌を焼いて栗色の髪をポニーテールに結っている。長身でかなり意志が強そうな顔つきだが、今は私の心配をしてくれているからか、眉尻が下がってキツイ印象が和らいでいた。
「あんた、たしかF中の美術部部員だったよね? 気分が悪いなら、桂木に言うけどどうする?」
わざと人と関わらないよう目立たないように、と気をつけて行動していたのに。全く知らない人間に覚えられていることに驚いたが、それもそうだった。彼女は後に映画部の中心メンバーとなる女の子だったから。 空気を察したり、あれこれ情報を手に入れ記憶するのが得意だったんだから。
そして、それに気付いた私は彼女に桃花を連れ出してもらおうと思案した。