Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編




「体調や気分は大丈夫だから、ありがとう」

「そう? なら、いっけどさ。あんた気をつけないとね」


女の子はツンツン、と私の着ていたパーカーの裾を引っ張る。何か? と彼女の顔を見れば、視線であっちを見ろと示された。


(なんだ?)


チラッとそちらを見て、すぐに目を逸らす。同時に耳をつんざく黄色い悲鳴が鼓膜を震わせた。


「きゃ~! こっち見た」

「あたしと目が合ったよ~」

「違うよ、アタシを見てたんだって」


数人の女子集団が、たったこれだけの出来事で色めき立つ。狙われていたと薄々感じてはいたが、これだけ注目を集めているとは思わなかった。


「は~モテる男は違うねぇ。あ、ちなみにアタシは曽我部 桐子(そがべ とうこ)。S中で映画部研究クラブを立ち上げたんだ。桂木とは部活繋がりで知り合ったの」


自己紹介をしてくれた彼女に、仮の名前を名乗ってから思い切って桃花のことを頼んでみたのだが。


「え~? 桜花でなく桃花さんねえ……まあ、いっけど。呼び出すだけでいいの?」


いともあっさり承諾してくれた曽我部は、それにと付け加えた。


「見た感じ、桃花さんはかなり内気で大人しいっぽいからさ。かなり年下の中坊にも良いようにあしらわれると思う。
だから、モテるあんたが個人的に桃花さんと会えば、あんたに好意を抱いてる女どもに何をされるか、保証はできないよ?」


彼女の指摘に、ドキッと心臓が嫌な音を立てた。過去に女の嫉妬絡みで桃花の人生を狂わせた張本人なのだから、これ以上桃花に嫌な想いはさせたくなかった。

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