Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編



ドキッ、と心臓が跳ねる。


10年以上ぶりにちゃんと起きた桃花を間近に見たら、ドキンドキンと鼓動が速くなって息が詰まりそうだった。


曽我部はやたらオーバーなリアクションで、桃花になにか話している。それで桃花が笑っている顔を見ただけで、顔が熱くなり膝が震えた。


曽我部が気を逸らしてくれている間に、と気を落ち着けるための深呼吸。少しだけ出した声が震えてる……焦るな、と自分に言い聞かせた。


曽我部と桃花は割と話が合ったのか、ヤシの木の根本に座り話し込んでいる。時々楽しそうに笑う桃花、驚いたように目を見開く桃花。そんな表情を見てるだけで、胸が満たされていく。

(あれだけ豊かな表情をするようになったんだ……)

夏の夜の訪問では、怯えた苦しげな顔しか見なかった。少なくとも彼女がそれなりに回復していると思うと、話を邪魔するのも悪いと思えて。


やがて、桃花がヤシの木に身を凭れたまま静かな寝息を立て始めた。それに気付き近づいた私に、曽我部は呆れたように息を吐く。


「ちょっと、ちょっと。せっかくアタシが呼び出したのに、何で見守るだけなのよ。何回もオッケーサイン出したじゃない」


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