Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
「ああ……そうだな」
気のない返事をしながら、やっと近づけた桃花から目が離せない。数年ぶりに間近に見た彼女は、着実に成長を遂げて。女性としての魅力が増していた。
「頼みついでに、もうひとつある」
「いいけど、なんなのよ?」
曽我部はニヤニヤと笑っていたから、オヤジか! とツッコミたくなるのを我慢して、視線で目標を示した。
「あの木の陰に僕のストーカーがいるから、追っ払って欲しいんだ。しつこいし、迫られて気持ち悪い」
私がそう話した途端、どうしてか曽我部の瞳がキラーンと輝いた。
「なぬ!? ストーカー……しかも男が男を! そ……それは美味しい……じゃなくて! 許せないわね、うん。あんたが受けだとか、あの朽ちた小屋に連れ込まれ××だとか。そ、想像なんてしてないんだから!
じゃあ、不埒な輩を追い払ってくるわ。じゃっ!」
若干意味不明なことを言いつつ、曽我部は猛ダッシュで護衛の男に突っ込んでいき……見事捕獲に成功していた。
彼女に感謝しつつ、やっと2人きりになれて静まり返った。そのまま桃花の横に腰掛けて、彼女の寝顔を眺める。
少しだけ長めのセミロングの髪が、風に靡いてさらりと揺れた。
ふと鼻をくすぐる太陽のような薫りに、心臓が狂いだす。
揺れる髪先に、躊躇いながら触れてみた。