Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
桂木とは中学だけでなく、高校と大学とも一緒だった。だから自然と事情を知られていて、大学時代にお目付け役として一緒に住む羽目になるとは思わなかった。
桂木が葛城グループの総帥と愛人の息子という立場を知ったのは、高校生の時。様子を見に来るという名目でマリアが留学しに来た際に、彼女が桂木に要らんことをあれこれしゃべってくれたせいだ。聞いてしまったからには、こちらも明かさないのはフェアでないと話してきた。
母はとうになくて、不本意ながら父親に養われていること。本当は映画を創りたい夢を抱いていること。いろいろ話しているうちに、少しだけ解りあえたかもしれない。友達とは微妙に違うが、同志というのが近い。
そんな彼には私の想いなどとうに知られていて、それを叶えるためにと大学を卒業後Uスーパーの人事部へ就職した。意味がわからない。
「君は、まどろっこしすぎるよ。好きなら素直に好きって言わないと、何も伝わらないよ。彼女は君のせいで初恋も知らないまっさらな少女なんだから」
遠回しに害虫駆除の件をチクリと言われ、ぐうの音も出ない。何もかもお見通しというわけか。
夏にあった万引き疑惑では桂木が上手く立ち回ってくれたお陰で、桃花は無罪放免となった。店長に頼んで今回は警察に被害届を出さず、内偵による調査に切り替える。無論、葛城グループの圧力があってこそ出来た力業だ。
そして、時折桃花をフォローしながら何も進展がないまま12月に入ると。桂木が提案してきた。
“桃花さんと同棲してみたくない?”――と。