Schneehase~雪うさぎ
身代わり王子にご用心番外編
クリスマスイブの当日、売り場がやたらと混雑するが仕方ない。クリスマスプレゼントにと玩具や雑貨等目ぼしいものが売れていく。
私も接客に忙しい中で時折カウンターの様子を見ていたのだが、通常3人はいなくてはいけない筈のラッピング係が桃花1人しかいない。他のカウンター担当はレジに張り付くか、無駄な掃除をして完全に役割を放棄していた。
(また……大谷の桃花への嫌がらせか)
村田家の一人娘だった奈美がフロア長の妻として幅をきかせている以上、桃花への風当たりが強いのは予想できたが。こんな子どもじみた真似をするとはずいぶん舐めた真似をしてくれる。
会社から給料を貰う立場を忘れて、割り当てられた最低限の役割すら果たさないとは。いくら嫌いだとか苦手な相手との仕事であっても、そんな個人的な感情で仕事を選り好みするとは、公私混同もいいところ。社会人どころか大人として最低じゃないか。そんなふうにムカッ腹立つ。
内線で事務所の桂木に連絡を取った私は、彼が藤沢さんに連絡を取るだろうと予想した通りに、ほどなくして彼女が現れて強烈な毒を吐いた。
“仕事ができないなら辞めればいいのに”――まさにその通りだが、今はまだ目立つ訳にはいかないからただ黙って包装紙を手に取る。桃花の役に立つなら、いくらでもラッピングし続けてもいい。
三人でやったお陰で無事にラッピングが終わったが、桃花に仕事を押し付け知らん顔をしたヤツラを許すはずもなく。やつらは人知れず給料カットや査定の減点評価に泣くことになった。